開業1年目の個人事業主がよく迷うのが、「国民健康保険や国民年金は経費になるの?」という疑問です。答えは経費にはなりませんが、確定申告で「所得控除」として差し引けるです。
経費(必要経費)と所得控除は、どちらも税金を減らしますが、差し引く場所が違います。この記事では、国税庁のタックスアンサー(No.2210 必要経費、No.1130 社会保険料控除、No.1135 小規模企業共済等掛金控除など)をもとに、支出ごとの仕分けと、事業用口座から払った場合の仕訳をまとめました。
この記事のポイント
- 必要経費:事業の売上を得るために使ったお金。事業所得の計算で売上から引く
- 所得控除:個人の事情(社会保険料・保険・寄附など)を考慮して、所得から引くもの
- 国民健康保険・国民年金は社会保険料控除(全額)、小規模企業共済・iDeCoは小規模企業共済等掛金控除(全額)
- 所得税・住民税は経費にも所得控除にもならない。個人事業税や事業分の固定資産税は経費(租税公課)
- 事業用口座から個人の支出を払ったら「事業主貸」で仕訳
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経費と所得控除の違い(税金の計算の流れ)
所得税の計算の流れ(必要経費と所得控除を引く場所)
出典:国税庁 No.2210・No.1130・No.1135 などをもとにサクヨミ.comが作成。出典(このページへのリンク)を明記すれば引用可。
必要経費は事業の帳簿(決算書)で、所得控除は確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の欄で扱います。どちらに入れても税金は減りますが、同じ支出を両方に入れることはできません。
支出ごとの仕分け一覧
| 支出 | 扱い | 確定申告での書き方 |
|---|---|---|
| 国民健康保険料 | 所得控除(社会保険料控除・全額) | 申告書の社会保険料控除欄 |
| 国民年金保険料 | 所得控除(社会保険料控除・全額) | 控除証明書をもとに記入 |
| 小規模企業共済の掛金 | 所得控除(小規模企業共済等掛金控除・全額) | 払込証明書をもとに記入 |
| iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金 | 所得控除(小規模企業共済等掛金控除・全額) | 払込証明書をもとに記入 |
| 生命保険料(個人の保険) | 所得控除(生命保険料控除・上限あり) | 控除証明書をもとに記入 |
| ふるさと納税 | 所得控除(寄附金控除) | 受領証明書(ワンストップ特例を使わない場合) |
| 所得税・住民税 | 経費にも控除にもならない | ― |
| 個人事業税 | 必要経費(租税公課) | 決算書の経費に計上 |
| 固定資産税(事業用の部分) | 必要経費(租税公課) | 家事按分した事業分のみ |
| 事業用のスマホ代・家賃(按分後) | 必要経費 | 決算書の経費に計上 |
※生命保険料控除などには上限があります。詳しくは国税庁の各タックスアンサーを確認してください。家賃などの按分は「家事按分の計算と根拠の残し方」で解説しています。
事業用口座から払ってしまった場合の仕訳
国民健康保険料や所得税を事業用の口座やカードから払った場合、帳簿上は「事業から個人にお金を移した」と考えて事業主貸で仕訳します。経費にはしません。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 国民健康保険料3万円を事業用口座から支払い | 事業主貸 30,000円 | 普通預金 30,000円 |
| 所得税10万円を事業用口座から納付 | 事業主貸 100,000円 | 普通預金 100,000円 |
| 個人事業税2万円を事業用口座から納付 | 租税公課 20,000円 | 普通預金 20,000円 |
| 個人の財布から事業の消耗品5,000円を購入 | 消耗品費 5,000円 | 事業主借 5,000円 |
事業主貸・事業主借は、事業と個人のお金の出入りを記録するための科目で、年をまたぐと元入金に集約されます。会計ソフトでは、口座の明細を取り込むときに「事業主貸」を選ぶだけで処理できます。
節税につながる所得控除を活用する
- 小規模企業共済:個人事業主の退職金のような制度。掛金は全額所得控除
- iDeCo:老後資金を積み立て、掛金は全額所得控除(受け取り時の課税も確認)
- 国民年金の前納・付加年金:納めた分は社会保険料控除の対象
- ふるさと納税:寄附金控除(自己負担2,000円を除く一定額が控除される仕組み)
どれも経費ではないので、事業の帳簿ではなく確定申告書で控除します。年末に控除証明書を集めておきましょう(令和8年分の確定申告スケジュール)。
会計ソフトなら仕分けと転記が簡単
会計ソフトでは、事業の帳簿(経費)と確定申告書の所得控除を同じ画面で扱えます。社会保険料や保険料は質問に答える形で入力でき、帳簿の事業主貸と混同しにくくなります。
経費と所得控除をまとめて処理できる会計ソフト
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よくある質問
Q. 国民健康保険料を経費にしてしまったら?
経費から外して社会保険料控除に入れ直します。申告後に気づいた場合は、修正申告や更正の請求が必要になることがあります。
Q. 家族の国民年金を払った場合は?
生計を一にする配偶者や親族の国民年金保険料を本人が支払った場合、その支払った金額も社会保険料控除の対象になります(国税庁 No.1130)。
Q. 小規模企業共済とiDeCoは両方使えますか?
両方に加入でき、それぞれの掛金が小規模企業共済等掛金控除の対象です。掛金の上限は制度ごとに異なるので、公式の案内で確認してください。
まとめ
国民健康保険・国民年金・小規模企業共済・iDeCo・生命保険・ふるさと納税は経費ではなく所得控除、所得税・住民税はどちらにもならず、個人事業税や事業用の固定資産税は経費です。事業用口座から個人の支払いをしたら「事業主貸」で仕訳し、確定申告書の所得控除欄に記入しましょう。


