青色申告の一番のメリットは、所得から最大65万円を差し引ける「青色申告特別控除」です。ただし65万円を受けるには条件があり、1つでも欠けると55万円や10万円に下がります。
この記事では、国税庁のタックスアンサー No.2072(令和8年4月1日現在)をもとに、65万円・55万円・10万円の条件の違いと、65万円控除で税金がいくら変わるかの目安、初めての人がつまずきやすいポイントをまとめました。
65万円控除の条件(まとめ)
- 青色申告の承認を受けている(青色申告承認申請書を期限内に提出)
- 複式簿記で記帳している
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、期限内(3月15日まで)に提出
- さらに、e-Taxで申告する、または優良な電子帳簿を保存する(届出が必要)
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65万円・55万円・10万円の違い
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の条件+(e-Taxで申告 または 優良な電子帳簿の保存) |
| 55万円 | 事業所得(または不動産所得)がある/複式簿記で記帳/貸借対照表・損益計算書を添付して期限内に申告 |
| 10万円 | 55万円・65万円の条件を満たさない青色申告者(簡易な記帳でも可) |
ポイントは「複式簿記」「期限内」「e-Tax」の3つです。紙で申告すると、ほかの条件を満たしていても55万円になります。また、期限を1日でも過ぎると、55万円・65万円は受けられず10万円になります(還付申告でも期限内の提出が必要)。
65万円控除で税金はいくら変わる?
控除額の差は、所得税と住民税の両方に効きます。10万円控除と65万円控除の差(55万円)で、どれくらい税金が変わるかの目安です。
| 所得税率(課税所得の目安) | 所得税の差 | 住民税(10%)の差 | 合計の目安 |
|---|---|---|---|
| 5%(195万円以下) | 約2.75万円 | 約5.5万円 | 約8.3万円 |
| 10%(195万〜330万円) | 約5.5万円 | 約5.5万円 | 約11万円 |
| 20%(330万〜695万円) | 約11万円 | 約5.5万円 | 約16.5万円 |
※復興特別所得税や国民健康保険料への影響は含めていない概算です。国民健康保険料も所得で決まるため、実際の負担差はさらに大きくなることがあります。
会計ソフトの年額は1〜2万円程度なので、65万円控除を受けるためにソフトを使っても十分に元が取れます。
初めての人がつまずきやすい5つのポイント
1. 青色申告承認申請書を出していない
青色申告をするには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に出す必要があります。期限はその年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)です。出していなければその年は白色申告になります(弥生のかんたん開業届で無料作成)。
2. 単式簿記(家計簿のような記帳)になっている
55万円・65万円には複式簿記が必要です。会計ソフトを使えば、取引を入力するだけで複式簿記の帳簿が作られます。
3. 事業用とプライベートのお金が混ざっている
事業用の口座・カードを分けておくと、記帳と決算が大幅に楽になります。家賃や通信費など、プライベートと共用しているものは家事按分で経費にする割合を決めておきましょう。
4. 紙で提出してしまう
紙の申告書では65万円ではなく55万円になります。マイナンバーカードとスマホがあれば、会計ソフトや国税庁の確定申告書等作成コーナーからe-Taxで送信できます。決算書をスキャンした画像(イメージデータ)での送信は認められていない点にも注意しましょう。
5. 期限を過ぎてしまう
確定申告の期限(原則3月15日)を過ぎると、55万円・65万円控除は受けられません。1月から少しずつ準備しておくのが安全です。
65万円控除を受けるための会計ソフト選び
複式簿記の帳簿、貸借対照表・損益計算書の作成、e-Taxでの送信までできる会計ソフトを使えば、65万円控除の条件をまとめて満たしやすくなります。
複式簿記・決算書・e-Taxまでできる会計ソフト
料金の3年総額は「個人事業主の会計ソフト比較」、マネーフォワードの値上げについては「料金改定まとめ」で解説しています。
65万円控除のための記帳の基本
複式簿記と聞くと難しそうですが、会計ソフトを使えば「いつ・何に・いくら・どの口座から」を入力するだけで、借方・貸方の仕訳が作られます。最低限押さえておきたい勘定科目の例です。
| 取引 | 勘定科目の例 |
|---|---|
| 取引先からの入金(売上) | 売上高 |
| パソコン(10万円未満)の購入 | 消耗品費 |
| ソフトやクラウドサービスの月額料金 | 通信費・支払手数料など |
| 交通費・出張費 | 旅費交通費 |
| 事業用口座へプライベートのお金を入れた | 事業主借 |
| 事業用口座から生活費を引き出した | 事業主貸 |
10万円以上の備品を買ったとき
パソコンなど10万円以上の備品は、原則として減価償却で数年に分けて経費にします。ただし青色申告者には、一定の要件のもとで少額の減価償却資産をまとめて経費にできる特例があり、令和8年4月1日以後の取得分は10万円以上40万円未満(それ以前は30万円未満)が対象です(年間合計300万円まで。国税庁 No.2100)。青色申告にすると使える特典の一つです。
| 取得価額 | 白色申告 | 青色申告(一定の要件) |
|---|---|---|
| 10万円未満 | その年に全額経費 | その年に全額経費 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で経費にできる | 同左、または特例でその年に全額 |
| 20万円以上40万円未満 | 原則として耐用年数で減価償却 | 特例でその年に全額経費にできる(令和8年4月1日以後の取得) |
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よくある質問
Q. 副業でも65万円控除は受けられますか?
副業の所得が「事業所得」に当たり、青色申告の承認を受けていれば対象になります。雑所得の場合は青色申告特別控除の対象外です。
Q. 赤字でも65万円控除は受けられますか?
控除額は、控除前の所得(黒字の合計額)が上限です。所得が65万円未満なら、控除額もその金額までになります。
Q. 優良な電子帳簿の届出はいつまで?
令和4年分以後は、優良な電子帳簿で65万円控除を受ける場合、所定の届出書を確定申告期限までに提出します。e-Taxで申告するなら届出は不要です。
まとめ
青色申告の65万円控除は、「青色申告の承認」「複式簿記」「決算書を添付して期限内に申告」に加えて「e-Taxで申告(または優良な電子帳簿)」がそろって初めて受けられます。会計ソフトとe-Taxを使えば条件を満たすのは難しくありません。所得税・住民税で10万円以上変わることもあるので、早めに準備しましょう。


