自宅で仕事をする個人事業主・フリーランスは、家賃や電気代、スマホ代の一部を経費にできます。このように、プライベートと仕事の両方に使う費用を、仕事に使った割合で分けることを家事按分(かじあんぶん)といいます。
ただし「なんとなく5割」では、税務署に説明できません。この記事では、国税庁のタックスアンサー No.2210(令和8年4月1日現在)と所得税基本通達45-1・45-2をもとに、費目ごとの按分基準、根拠の残し方、年間でいくら経費にできるかの計算例をまとめました。
この記事のポイント
- 経費にできるのは、仕事に直接必要だったことが明らかに区分できる部分だけ(国税庁 No.2210)
- 通達では、仕事に必要な部分が50%を超えるかで判定し、50%以下でも明らかに区分できればその部分は経費にできる(基本通達45-2)
- 基準は費目ごとに「床面積」「使用時間」「日数」「走行距離」などで決める
- 按分の根拠(間取り図・使用時間の記録など)をメモで残し、毎年同じ考え方で計算する
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家事按分とは?国税庁のルール
国税庁は、店舗兼住宅の家賃や水道光熱費のように家事と業務の両方にかかわる費用(家事関連費)について、必要経費にできるのは「業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額」に限るとしています(No.2210)。
さらに所得税基本通達では、業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定し、50%以下であっても、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合はその金額を必要経費にできるとしています(45-2)。判定は、業務の内容、経費の内容、家族の構成、住宅などの利用状況を総合して行います(45-1)。
費目別の按分基準
| 費目 | 按分の基準 | 計算の例 |
|---|---|---|
| 家賃 | 仕事専用スペースの床面積の割合 | 作業部屋10㎡÷住居50㎡=20% |
| 電気代 | 仕事をする時間・部屋の割合 | 1日8時間×月22日の作業時間などから割合を決める |
| 水道代 | 原則として業務で使う割合は小さい | 来客の多い店舗兼住宅などを除き、経費にしないことも多い |
| スマホ・携帯電話 | 業務で使う時間・通話の割合 | 業務用の通話・アプリの利用時間から60%など |
| インターネット回線 | 業務で使う時間の割合 | 平日の作業時間中心なら50%など |
| 車・ガソリン代 | 走行距離の割合 | 業務6,000km÷総走行10,000km=60% |
| パソコン | 業務で使う時間の割合 | 業務7割なら購入額(または減価償却費)の70% |
※割合はあくまで例です。自分の実態に合わせて決め、説明できる根拠を残してください。
年間でいくら経費になる?計算例
自宅の一室を仕事部屋にしているフリーランスの例です。
| 費目 | 年間の支払額 | 按分割合 | 経費になる額 |
|---|---|---|---|
| 家賃(月10万円) | 120万円 | 20%(床面積) | 24万円 |
| 電気代(月1万円) | 12万円 | 30%(使用時間) | 3.6万円 |
| スマホ(月8,000円) | 9.6万円 | 60%(使用時間) | 5.76万円 |
| ネット回線(月5,000円) | 6万円 | 50%(使用時間) | 3万円 |
| ガソリン代(月1.5万円) | 18万円 | 60%(走行距離) | 10.8万円 |
| 合計 | 47.16万円 |
所得税と住民税を合わせた税率が20%なら、約9.4万円の税負担の差になります。按分を正しく行うだけで、手元に残るお金が大きく変わります。
税務調査で説明できる「按分根拠メモ」の残し方
- 家賃:間取り図に仕事スペースを書き込み、面積の計算式を残す。写真もあると説明しやすい
- 時間で按分するもの:1〜2週間の作業時間の記録(カレンダーや作業ログ)を保存
- 車:業務で走った日・行き先・距離を記録(運転日報やスマホのメモ)
- スマホ:業務用の通話・アプリを確認できる明細
- 毎年見直す:引っ越しや働き方が変わったら割合を更新し、変更理由もメモする
家事按分の注意点
- 持ち家の場合、家賃は払っていないので、按分の対象は住宅ローンの利息・減価償却費・固定資産税など(ローンの元本は経費にならない)
- 家族名義の賃貸で家族に家賃を払う場合など、生計を一にする親族への支払いは原則として経費にならない
- 按分割合を極端に高くすると説明が難しくなる(生活の場としての使用実態とのバランスを考える)
- 自宅を事業所にしたくない、住所を公開したくない場合は、事業所の住所としてバーチャルオフィスを使う方法もある(バーチャルオフィスの選び方)
会計ソフトなら決算時に自動で按分できる
家事按分は、日々の記帳では支払った全額を入力しておき、決算のときに業務分だけを経費にする方法が一般的です。会計ソフトの家事按分機能を使えば、費目ごとに割合を一度設定するだけで、決算時に自動で計算されます。
家事按分の設定ができる会計ソフト
車をよく使う人は、法人ガソリンカードなど経費の管理がしやすいカードも検討できます(ガソリンカードの経費処理と仕訳)。パソコンの購入額の扱いは「パソコンはどこまで経費になる?」、会計ソフトの比較は「個人事業主の会計ソフト比較」をご覧ください。
開業前に支払った準備費用(名刺・ホームページ・バーチャルオフィスの初期費用など)は、家事按分ではなく「開業費」として扱います(開業費の任意償却のルール)。
よくある質問
Q. 按分割合に上限はありますか?
法律で一律の上限は決まっていません。業務に直接必要だった部分を明らかに区分できるかがポイントで、実態に合った割合と根拠が必要です。
Q. 白色申告でも家事按分できますか?
できます。国税庁の案内では、青色・白色の区別なく、業務に直接必要だったことが明らかに区分できる部分が必要経費になるとされています。
Q. 会社員の副業でも使えますか?
副業が事業所得や雑所得として申告するものであれば、その業務に直接必要な部分は経費にできます。本業の在宅勤務分と混ぜないよう注意してください。
まとめ
家事按分は、仕事に直接必要だった部分を、床面積・時間・走行距離など合理的な基準で分ける仕組みです。根拠のメモを残し、会計ソフトで毎年同じ考え方で計算すれば、税務署にも説明しやすく、経費の取りこぼしも防げます。

