個人事業主として開業するとき、最初に作るのが「開業届」と「青色申告承認申請書」です。手書きで用紙を埋めることもできますが、弥生のかんたん開業届を使うと、画面の質問に答えるだけで必要な書類を無料で作成できます。
この記事では、弥生の公式ページと国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在)をもとに、作れる書類と「自分に必要な書類」の見分け方、提出の期限、作成から提出までの流れ、よくある注意点をまとめました。
この記事のポイント
- 弥生のかんたん開業届は無料(弥生IDの登録が必要)。パソコンでもスマホでも作れる
- 作れるのは開業届・青色申告承認申請書など5種類。インボイスの登録申請書は対象外
- 開業届の期限は「開業した年の確定申告期限まで」。ただし青色申告承認申請書は開業日から2か月以内(1月16日以後の開業)
- 2025年1月から税務署で控えに受付印が押されなくなった。提出前にコピーを取って保管
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弥生のかんたん開業届とは
弥生株式会社が「弥生 起業・開業ナビ」の中で提供している、個人事業の開業手続き書類の作成サービスです。公式ページでは、登録から書類作成・印刷できる状態まで無料と案内されています。
| 項目 | 内容(2026年10月時点・公式ページより) |
|---|---|
| 料金 | 無料 |
| 利用に必要なもの | 弥生ID(メールアドレスで新規登録、最短1分) |
| 対応端末 | パソコン・スマートフォン |
| 提出方法 | 作成した書類を印刷し、管轄の税務署へ郵送または窓口で提出 |
| 対象外 | 適格請求書発行事業者の登録申請書(インボイス) |
作れる5つの書類と「必要な人」
5種類すべてを出す必要はありません。下の表で、自分に必要なものだけを作りましょう。提出期限は国税庁 No.2090(令和8年4月1日現在)によります。
| 書類 | 必要な人 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 事業を始めたすべての人 | 開業した年分の確定申告期限まで |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 青色申告(最大65万円控除)をしたい人 | その年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 従業員や家族に給与を払う人 | 給与支払事務所を開設した日から1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与を払う人のうち、源泉所得税の納付を年2回にまとめたい人(給与の支払いを受ける人が常時10人未満) | 随時(原則、提出した翌月の支払いから適用) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 家族(生計を一にする配偶者など)に給与を払って経費にしたい青色申告者 | その年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合などは2か月以内 |
一人で働くフリーランス・副業の人なら、基本は開業届と青色申告承認申請書の2枚です。
一番注意したいのは青色申告承認申請書の期限
開業届の期限は「確定申告期限まで」と長くなりましたが、青色申告承認申請書は今も開業日から2か月以内(1月16日以後に開業した場合)です。これを過ぎると、その年は青色申告ができず、65万円控除も受けられません。開業届と同時に作って一緒に出すのが確実です。
作成から提出までの流れ
- 弥生 起業・開業ナビから「弥生のかんたん開業届」を開き、弥生IDを登録(またはログイン)
- 開業日、住所・納税地、職業・事業の内容、屋号(任意)などを画面の質問に沿って入力
- 青色申告をするか、従業員や家族に給与を払うかを選ぶ
- 書類をPDFでダウンロードして印刷し、内容を確認
- 控え用にコピーを取ってから、管轄の税務署に郵送または窓口で提出
入力前に準備しておくもの
- マイナンバーがわかるもの(マイナンバーカードなど)と本人確認書類
- 開業日(事業を始めた日)
- 事業の内容(例:Webデザイン、ライター、ネットショップ)
- 屋号を使う場合は屋号
- 事務所の住所(自宅以外を使う場合。バーチャルオフィスの住所も可)
自宅の住所を開業届や名刺に出したくない人は、「個人事業主の開業届は自宅住所で出すべき?」と「バーチャルオフィスの選び方」も参考にしてください。
郵送するときの同封物
郵送で出す場合は、マイナンバーの確認書類と本人確認書類の写しを同封します。控えを返送してほしい場合は、控えと切手を貼った返信用封筒も入れます。
控えへの受付印はもう押されない
国税庁は2025年(令和7年)1月から、申告書や届出書の控えに収受日付印を押さない取扱いにしています。開業届の控えは銀行口座の開設などで求められることがあるため、提出前にコピーを取り、提出日をメモして保管しておきましょう。
ほかの作り方との比較
| 方法 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 弥生のかんたん開業届 | 無料 | 質問に答えるだけ。青色申告承認申請書など5種類を同時に作れる |
| 国税庁の様式に手書き | 無料 | 用紙をダウンロードして記入。記入例を見ながら自分で埋める |
| e-Tax(国税庁) | 無料 | マイナンバーカードなどでオンライン提出。印刷・郵送が不要 |
「書き方がわからない」「青色申告の書類も一緒に作りたい」なら弥生のツール、「オンラインで提出まで済ませたい」ならe-Taxが向いています。
開業届を出したら次にやること
- 事業用の銀行口座とクレジットカードを分ける
- 会計ソフトを決めて、開業日から帳簿をつける(65万円控除にはe-Taxでの申告などが必要)
- インボイス登録が必要か判断する(取引先が課税事業者の場合など)
- 開業手続き全体は「個人事業主の開業手続きチェックリスト」で確認
会計ソフトは、弥生の「やよいの青色申告 オンライン」がセルフ・ベーシックプランとも初年度無料です(2027年3月15日までの申込み)。3社の料金比較は「個人事業主の会計ソフト比較」をご覧ください。
開業届の主な記入欄と迷いやすいポイント
弥生のツールでは画面の質問に答える形で入力しますが、実際の開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)のどの欄に何が入るかを知っておくと、迷わずに進められます。
| 記入欄 | 書く内容 | 迷いやすいポイント |
|---|---|---|
| 納税地 | 原則は住所地(住民票の住所) | 事務所の住所を納税地にすることもできる(その場合は住所地も記入) |
| 上記以外の住所地・事業所等 | 事業所の住所 | 自宅以外の事務所やバーチャルオフィスの住所を書ける |
| 職業 | 例:Webデザイナー、ライター、ネットショップ運営 | 個人事業税の業種判定の参考にされることがあるので、実態に合わせて具体的に |
| 屋号 | 任意 | 屋号付きの銀行口座を作りたいなら記入しておくと便利 |
| 届出の区分 | 「開業」に丸 | 事業を引き継いだ場合などは別の区分 |
| 所得の種類 | 事業(農業)所得など | フリーランスの多くは「事業所得」 |
| 開業日 | 事業を始めた日 | 準備の日ではなく、実際に事業を始めた日を書く |
| 青色申告承認申請書の提出の有無 | 同時に出すなら「有」 | 青色申告をするなら同時提出がおすすめ |
| 給与等の支払の状況 | 従業員・家族への給与がある場合に記入 | ひとりなら空欄でよい |
開業日はいつにする?
開業日は「事業を始めた日」です。名刺を作った日や最初の仕事を受けた日など、実態に合う日を選びます。開業日より前の準備費用(パソコンの購入や名刺代など)は「開業費」として扱える場合があります。開業日を決めると、青色申告承認申請書の期限(1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内)も決まるので、カレンダーに入れておきましょう。
開業届を出すメリット
- 青色申告ができる(青色申告承認申請書とセット):最大65万円の控除、赤字の繰越し、40万円未満(令和8年4月1日以後の取得)の減価償却資産を一度に経費にできる特例など
- 屋号付きの銀行口座を作りやすい:開業届の控えを求める銀行が多い
- 事業をしている証明になる:小規模企業共済の加入、ファクタリングや事業用サービスの申込みで提出を求められることがある
- フリーランス向けサービスを使いやすい:例としてFREENANCEの屋号口座は開業届の提出が条件
自宅の住所を出したくない場合
開業届そのものは税務署に出す書類なので公開されませんが、開業後は請求書・名刺・ホームページ・ネットショップの表記などに事業所の住所を載せる場面が増えます。自宅の住所を出したくない場合は、事業所としてバーチャルオフィスの住所を使う方法があります。料金や注意点は「バーチャルオフィスの選び方」を参考にしてください。
開業後の1年間の流れ
| 時期 | やること |
|---|---|
| 開業時 | 開業届・青色申告承認申請書を提出、事業用口座・カードを用意、会計ソフトを決める |
| 毎月 | 取引の記帳、請求書の発行、領収書の保存 |
| 年末 | 経費・在庫の確認、控除証明書を集める |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 確定申告(青色申告65万円控除にはe-Taxでの申告など) |
| インボイス登録した場合 | 消費税の申告(個人は翌年3月31日まで) |
確定申告の準備は「令和8年分の確定申告スケジュール」、65万円控除の条件は「青色申告65万円控除の条件」で解説しています。
個人事業主・一人社長が使える請求書買取(ファクタリング)7社 早見表
| サービス | 買取金額 | 手数料 | 入金まで | 向いている人 | 公式 |
|---|---|---|---|---|---|
| ラボル 解説記事 | 1万円〜 | 一律10% | 審査後、最短30分(振込は24時間365日) | 個人事業主・フリーランス限定。法人宛の請求書のみ | 公式サイト |
| ペイトナー 解説記事 | 1万円〜 | 一律10% | 審査後、最短即日(審査は営業時間内) | 個人宛の請求書も可。独立直後でも申込可 | 公式サイト |
| FREENANCE 解説記事 | 公式サイトで確認 | 3〜10% | 最短5分〜即日 | 法人宛の請求書のみ。会員に「あんしん補償」 | 公式サイト |
| QuQuMo online 解説記事 | 上限なし | 1%〜 | 最短2時間 | まとまった金額向け。ノンリコース | 公式サイト |
| Easy factor | 公式サイトに記載なし | 2〜8% | 最短60分 | オンライン完結(Zoom面談)。個人事業主も可 | 公式サイト |
| 株式会社No.1 | 50万円〜3億円 | 2社間0.5〜15%/3社間0.5〜5% | 最短即日 | 建設業に強い。2社間・3社間両対応 | 公式サイト |
| FIKS 法人専用 | 上限・下限なし | 2%〜 | 最短即日 | 法人のみ(個人事業主は不可)。2社間・3社間。オンライン完結 | 公式サイト |
各社公式サイトの記載(2026年11月確認)。手数料・入金時間は審査内容と書類の提出状況で変わります。利用は手取りの減少を理解したうえで、今月の支払いのつなぎなど短期に限るのが安全です。
🧮 自分の売上ではいくら?インボイスの納税額シミュレーターで2割特例・3割特例・簡易課税・本則課税を比べられます。
よくある質問
Q. 本当に無料ですか?
公式ページでは、登録・書類作成・印刷まで無料とされています。会計ソフトなど、ほかのサービスを契約しなければ費用はかかりません。
Q. 副業でも開業届は出せますか?
出せます。事業として継続して行う副業なら、開業届と青色申告承認申請書を出すことで青色申告ができます。
Q. 青色申告承認申請書の期限を過ぎたら?
その年は白色申告になります。翌年から青色申告をするには、翌年の3月15日までに申請します。
Q. インボイスの登録申請もできますか?
弥生のかんたん開業届では作れません。インボイスの登録申請はe-Taxなどで別に行います。
まとめ
弥生のかんたん開業届を使えば、開業届と青色申告承認申請書を無料でまとめて作れます。特に青色申告承認申請書は開業日から2か月以内という期限があるので、開業届と一緒に作って出しましょう。提出前にはコピーを取り、提出日を記録しておくと、口座開設などで困りません。


