個人事業主として開業するときは、税務署への届出だけでなく、インボイス登録を検討したり、事業用の住所や資金繰りの手段を決めたりと、やることが多くあります。この記事では、国税庁の案内(令和8年4月1日現在)をもとに開業時の届出と期限を整理し、住所・資金・経費・仕事の獲得まで、開業前後に確認したいことをチェックリストにまとめました。
- 開業届の提出期限は、国税庁の現在の案内では「事業を開始した年分の確定申告期限まで」です。
- 青色申告をしたい場合は、原則3月15日まで(1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内)に承認申請が必要です。
- インボイスの2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間まで。個人事業者は令和9年分・令和10年分に3割特例を使えると国税庁が案内しています。
開業前後のやることチェックリスト
- 届出:開業届、青色申告承認申請書を税務署へ(e-Taxでも提出可)
- インボイス:取引先が課税事業者中心なら登録を検討
- 住所:自宅住所を公開してよいか、バーチャルオフィスを使うかを決める
- 口座・カード:事業用の口座と、経費の支払い手段(ガソリンカードなど)を分ける
- 資金繰り:入金までの期間が長い場合の資金手段を事前に把握しておく
- 仕事の獲得:クラウドソーシングや自社サイトなど、集客の窓口を用意する
税務署への届出と提出期限
開業時に税務署へ出す主な届出書と期限は次のとおりです。すべてを出す必要はなく、青色申告をするか、従業員を雇うかなどによって必要なものが変わります。
| 届出書 | 出すケース | 提出期限(国税庁の案内) |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業を始めたとき | 事業を開始した年分の確定申告期限まで |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 青色申告をしたいとき | 原則、青色申告をする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 家族に給与を払い経費にしたいとき | 原則3月15日まで(開業後の場合は2か月以内など) |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 従業員を雇い給与を支払うとき | 開設から1か月以内 |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | インボイスを発行したいとき | 登録希望日を記載して提出 |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.2090「新たに事業を始めたときの届出など」(令和8年4月1日現在法令等)。都道府県税事務所や市区町村への届出が別に必要な場合があります。
開業届は「その年の確定申告期限まで」
以前は「開業から1か月以内」と説明されることが多かった開業届ですが、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)では、提出期限は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」とされています。ただし、青色申告の承認申請には別の期限があるため、青色申告をしたい場合は開業届と同時に出しておくと安心です。
青色申告をするなら承認申請の期限に注意
青色申告承認申請書は、原則として青色申告をしたい年の3月15日までに提出します。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内です。期限を過ぎると、その年は白色申告になります。
インボイス登録は取引先に合わせて判断
取引先が消費税の課税事業者(企業など)の場合、インボイス(適格請求書)を求められることがあります。一方、一般消費者向けの商売が中心なら、登録しない選択肢もあります。
インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった人が使える「2割特例」は、国税庁によると令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む課税期間が対象で、個人事業者なら令和8年分の申告までです。国税庁は、個人事業者は令和9年分・令和10年分の申告で「3割特例」を適用できると案内しています。詳しくは国税庁の2割特例特設ページを確認してください。
事業用の住所をどうするか
開業届やネットショップの特定商取引法の表示、名刺などに使う住所は、自宅を使うこともできます。ただし、自宅住所をネット上に公開したくない場合は、住所を借りられるバーチャルオフィスを使う方法があります。登記や銀行口座の開設、許認可では注意点もあるため、次の記事で確認してください。
住所・バーチャルオフィスの関連記事
★この記事で最もおすすめのサービス
資金繰りの手段を事前に知っておく
個人事業主は、売上の入金が請求から1〜2か月後になることも珍しくありません。手元資金が足りなくなったときの手段として、売掛金を売却して早めに現金化する「ファクタリング」や、事業者向けのローンがあります。手数料や金利、審査の条件はサービスによって大きく違うため、比較してから選びましょう。
資金調達の関連記事
経費の支払いを分けて管理する
事業の支出とプライベートの支出を分けておくと、確定申告の手間が大きく減ります。車を使う仕事なら、協同組合が発行する法人ガソリンカードは個人事業主でも申し込めるものがあり、給油代の管理に使えます。
経費・ガソリンカードの関連記事
仕事の獲得窓口をつくる
開業直後の仕事の獲得には、クラウドソーシングの活用や、自分のWebサイト(独自ドメイン)の用意が役立ちます。
仕事獲得・Webサイトの関連記事
よくある質問
開業届を出さないとどうなりますか?
提出しなかった場合の罰則規定はありませんが、青色申告ができない、屋号付きの口座開設や各種審査で開業の証明を出しにくいなどのデメリットがあります。
副業でも開業届は必要ですか?
事業として継続的に所得を得るなら提出の対象になります。副業の所得の扱いや申告の要否は収入の状況によって異なるため、国税庁のサイトや税務署で確認してください。
まとめ:期限の決まった手続きから先に済ませよう
開業時は、青色申告の承認申請のように期限が決まっている手続きから先に済ませるのがおすすめです。そのうえで、住所・資金繰り・経費管理・仕事の獲得の順に準備を進めると、開業後に慌てずに済みます。制度は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁のサイトで確認しましょう。

